速度型PID制御



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公開日:2017/6/23          

 ・In English
<前提知識>
 ・PID 制御
 ・Scilab


基本的なPID制御(位置型)に対し、その変化形の速度型PID制御について説明します。

■位置型PID制御とは

まずPID制御の基本形はこちらで説明したとおり以下となります。この形を速度型PID制御に対比させ、位置型PID制御といいます。




■速度型PID制御とは

速度型PID制御は、以下の様にPID制御の変化分(微分)を前回操作量に足していく形です。速度型PIDと言う理由はここにあり、微分を行うことは速度を示しており、位置の微分が速度という事になります。




通常状態においては位置型PID制御と同じ動きとなりますが、速度型PID制御にすることで利点が発生する場合があります。 その理由を説明していきますが、その前にもう少し補足説明を加えます。上記は以下の様に変形できます。



■速度型PID制御の設計

Scilabで設計すると以下となります。微分器と制御対象物の中身はこちらになります。 また途中で1000で割っておりますが、これは次のブロックの前回値を積算する処理に影響しております。 積算処理は0.001秒前の値の積算となっており、1秒間の積算値に変換する必要があるため、1000で割っております。

<パラメータ>
Kp=4.75 , Ki=3.5 , Kd=0.25



シミュレーション結果は以下のとおり、位置型PID制御の結果と同じになります。位置型PID制御の結果はこちら


■速度型PID制御の利点

ここで本題の速度型PID制御の利点についてです。一言でいうと、リセットワインドアップの処置が不要になることが利点です。 どういうことか説明していきます。

ワインドアップとは

実際に制御対象物をコントロールする場合、制御するコントローラの制約などによって、操作量に制限をかける場合があります。 位置型PID制御では、目標値にいつまでも収束しない場合、I項としては補正値がどんどん積みあがっていきます。この状態をワインドアップといいます。

動作を確認します。以下の様にPID制御にサチュレーションブロックを付けます。制限量は上限0.9、下限0とします。

■位置型PID制御


<シミュレーション結果>


ワインドアップが発生した時の問題として、目標値が変わった時に制御対象物が目標値に追従しづらくなるという現象が発生します。

ワインドアップの対策としては、ある条件にてI項をリセットする等の処置が必要になります。これが位置型制御における問題点となります。 では、速度型PID制御ではどうなるのか見ていきます。

■速度型PID制御
位置型PID制御で確認した時と同様にサチュレーションブロックを付けて動作確認します。


<シミュレーション結果>
以下のとおり、ワインドアップ対策を施さなくても、ワインドアップによる目標追従性悪化の問題は解消されます。


なおワインドアップは、今回の例の様に操作量に制限値を加えた時だけでは無く、マニュアルでPID制御の操作のON/OFFを切り替える場合にも発生します。 この時にも速度型PID制御はワインドアップ対策は不要です。











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