エンジンのトルクから車の加速度を求める方法



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プラントモデル

公開日:2017/10/14 , 最終更新日:2020/11/20         

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前提知識
 ・出力、トルク、イナーシャ ・走行抵抗
 ・ニュートンの法則 ・等加速度直線運動の法則


■エンジントルクから加速度を算出する方法

エンジンのトルクから車の加速度を求める方法を説明します。エンジントルクは自動車のカタログに以下の様な記載で記されており、 図のエンジンからトランスミッションに伝える部分のトルクで、エンジン軸トルクといいます。

 ・ 最大トルク (Nm/rpm):142/3,600
 ・ 最高出力 (kW/rpm) :72/5,200



エンジンが発生したトルクは、伝達ロスを生じながらトランスミッションとデフ(ディファレンシャル)の中にある2つのギア比(変速ギア,ファイナルギア)によって増幅されます。それが最終的にタイヤに伝わって駆動力となります。 駆動力を求めるために先ず、ドライブシャフト軸のトルクを求めます。式は以下のとおり。イナーシャとは回転体の回りづらさを表現したもので、角加速度とイナーシャに比例して負荷が発生します。



次にタイヤに伝わる駆動力を求めます。ドライブシャフトの軸トルクをタイヤ半径で割れば駆動力が求まるのですが、タイヤ半径で「割るのか」「掛けるのか」 解らなくなる時があるかもしれませんが、考え方としては、てこの原理と逆で、中心軸からr[m]離れたところから力Tを与えた場合は、中心軸にはT・rの力がかかりますが、 逆に、中心軸からr[m]離れたところに力を与える場合は、中心軸のトルクをrで割る必要があります。



最後に加速度を求めるのですが、これはニュートンの第2法則のF=maから求めるので、駆動力から走行抵抗を引いた分を車重で割る必要があります。



■エンジントルクから加速度を概算で求める

以上が加速度を求める方法ですが、概算で加速度を求めるには以下で計算する場合もあります。走行抵抗や、イナーシャ分の負荷などを省いた形です。



■加速度から車速を求める方法

加速度が求まれば、等加速度直線運動の式を用いる事で車速を求める事ができます。



ただし、エンジンがトルクを発生し続けているからといって、車速はどこまでも上がる訳ではありません。 その理由は、先ず第一にギア段が低い時はエンジン回転がすぐ上昇して、回転数の上限に到達してしまい自動的にトルク制限がかかってしまいます。 この回転数の上限はエンジンが故障しない様に設定されています。

次に回転数が上限に達する前にギア段を上げていっても、車速の上限(日本では180km/hが相場)に到達してしまい、これまた自動的にトルク制限がかかってしまいます。 車速の上限が無い欧州などでは、高車速になるに従い走行抵抗が大きくなり、最終的には駆動力と走行抵抗が釣り合って、それ以上加速度が発生しなくなります。

■加速度や車速を求めるために出力は必要ない

これまでの説明のとおり、加速度や車速を求めるために必要なのはトルクのみで、出力は使用しませんでした。エンジンの回転数すら使っていません。 それでは出力とは一体何なのでしょうか?それをこちらで説明いたします。

■エンジントルクから加速度を求める具体例

具体例として、マツダのMazda3(SKYACTIV-X)の公式スペックから車両の加速度を概算で求めます。ネットで拾った情報によると以下です。

 ・ 最大トルク (Nm/rpm):224/3,000
 ・ タイヤスペック:215/45R18
 ・ 車重:1411kg
 ・ ギア比:1.379 (今回は3速のギア比で計算します)
 ・ 最終ギア比:4.388

また0-100km/hのタイムが8.2秒と発表されていますので、これを今から計算する結果の答え合わせとして使用します。

<計算>
先ずはタイヤスペックからタイヤサイズを求めます。算出方法はこちらで説明。





以上より、公式発表の8.2秒にそれなりに近い値が求めることができました。計算値が公式発表値と異なる理由の一つに、ギア比を3速前提で計算している為と考えられます。 より正確に計算しようと思ったら各回転ごとのトルクや、変速パターン、ギア比を考慮する必要があります。

なおmazda3は2020年11月に改良が入り、トルクが240Nm/4500rpmになりました。 トルクの変化に対する車速の変化をイメージするために、トルクの条件のみ240Nmにした時の0-100km/hの時間を計算すると8.7秒になりました。









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